この1週間、寝ても覚めても私の頭の中は、「幻影」で一杯でした。
苦しい1週間でした。
8月からの本番続きでしんどさがピークに来たのか、声がどんどん出にくくなって喋る声も枯れてくるし、声帯が動かなくなってきているのが分かったし、それでも、歌わないと仕上がらないし、夜は部屋に籠って10時まで練習の毎日でした。
この曲はまったく仏語の朗唱のスタイルで、フォーレ独特の和声でフレーズがたおたおとどこまでも続くの・・・っていう終りの見えない曲で、非常に暗譜がし難くて苦しい毎日でした。
やっぱり喉の調子がおかしいので、思い切って音声クリニックで診察してもらうと、声帯に白い痰のようなものがくっついていて、しばらくドクターストップになってしまった。
それからは、歌わずに、楽譜とにらめっこ。
前日のワークショップで、なんとか声は戻ってきたものの、やはり暗譜は出来ませんでした。
仕方なしに、今日の本番は暗譜に気を取られるより曲の中身に集中しようと楽譜を置いて歌いました。
フォーレ74歳の最晩年の曲。
たゆたゆと同じ節がとめどもなく流れ、心地いい酔いのフォーレの音楽。
水の上の白鳥の幻影、水の中に覗き見る過去の幻影、夜の庭に見る幻影、そして踊り子の幻影。
非常に難しかったのですが、歌い終わってみると、案外、私はこの曲に惹かれている自分を発見しました。
フォーレの人間の大きさを感じた曲でした。
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