ラヴェル「博物誌」

オッソロシク難しかった「博物誌」の本番が終わりました。

4日前合わせをしたときは、まったくのボロボロで、私の中で、楽譜を置いて歌おう・・・と気持ちが傾いていました。

5年ほど前、本番で歌ったことがあるチクルスですが、その頃は、なんの怖さもなくただ歌っただけのものでした。

今回は、いろいろな知識がついた分、半端ない難しさがずっしりと私の中に乗っかって、それはそれは大変な曲と対峙しているのだという認識ができていました。

なんといっても、この「博物誌」はラヴェルの作品中、いや、フランス歌曲の歴史上、革命的な作品です。

フランス語の散文に作曲した、いわば、メロディじゃないのです。語りの世界です。

それも滑稽さと皮肉を込めた・・・。

フランス語の無音のe語尾の脱落は、簡単そうで非常に難しい。語りと歌との境界線も難しい。なにしろ、楽譜が非常に複雑で、感情に任せて言葉を歌っては、リズムの譜割りが崩れて、ピアノと合わなくなってしまう。そして重要なのが休符の時。休符をどう処理するかがキーポイントでした。


2日前、暗譜でいく!と決めて以来、ひたすら、楽譜を正確に紙に書き写す作業をしていました。歌っている時より、休符をいかに正確に休むか・・。

言葉を書いて書いて書きまくりました。

まったく、ラヴェルらしい精巧な楽譜です。

耐えに耐えて、食事を取る時間も惜しんで、24ページもある楽譜の隅々の言葉と休みの拍数を、紙に移しては、確認して歌う・・を延々繰り返して、何とか、本番前日、全曲止まらずに通せるようになりました。

本番は、これだけやったのだという自信から、まったく冷静に慌てることなく、曲をナレーターとして歌う役目ができたように思えます。

終わった後、先生とハグして喜びを分かち合いました!