シューマン

8月20日(木)兵庫芸術文化センターでシューマン「女の愛と生涯」を歌います。

 

この曲は、27年前、ザルツブルグの講習会でジェラール・スゼーに見てもらった曲であり、第1回のリサイタルのメインの曲でした。

 

東京青山の江口元子先生のお宅でシューマン「雪割草」をレッスンしてもらっていた時、ちょうどスゼーが隣の部屋で私の歌を聞いて下さっていて、「ニースか、ザルツブルグの僕の講習会に来ないか?」と声をかけてもらいました。

そこから、私の声楽家への挑戦が始まったわけで、シューマンは私にとって、とても大事な作曲家です。

江口先生はよく「スゼーはあなたのエモーションが気に入ったのよ」と言ってくださっていました。今回は、思い出深い「女の愛と生涯」を歌います。

 

ここに出てくる女性はとても控えめで謙虚で自分を卑下もし、身も心も夫に尽くすという生き方をします。当時はまだ若く純真な私は、二人の幼い子の世話をしながら、この女性の生き方に共感しながら歌っていました。

でも、時代が変わって、女性が男性と対等に社会で活動するのが当たり前の今、こういう詩そのものに抵抗を感じている私です。

 

女が恋をして告白されて、結婚して出産して、最後には夫の死を迎える。

後奏で、再度1曲目のメロディが流れ回想のシーンで終わります。

 

これって、男目線の曲だなって思うのです。

女性は、こういう詩は書かないでしょうと。

女流ピアニストとして、ロバート・シューマン以上に名声を得ていたクララは、父親の反対を押し切り、訴訟の末シューマンと結婚します。

その結婚した年にこの詩に共感して作曲したロバート。

ロバートの望む女性像がこうだったのでしょうね。

27年の月日が経って私自身も見方が変わって、さて、どんな「女の愛と生涯」を歌うことになるでしょうか。